ワイヤロープのプレテンション加工
プレテンション(pre-tension)加工は、製作完了後のワイヤロープを図のような設備に張りわたしてから、所定の荷重(張力)をかけ、そのまま、一定時間を保持した後、荷重を元に戻すことを一定回数繰り返すもので、プレストレッシング(pre-stressing)とも呼ばれている。
プレテンション加工の効果を挙げると次のようなる。
① 使用の初期に生じる初期伸び及びロープ径の細りが少くなる。
② 弾性係数が高くなるとともに、バラツキが少くなり安定する。
③ 素線やストランドの配列状態が良くなるので、ロープの耐疲労性能が向上する。
④ 一定荷重下の正確な測長ができ、測長位置をマーキングできる。なお、ロープに軸線マーク
(ロープを使用設備に取付けるさいに、ロープのねじれの有無をチェックするためのマーク)
をつけることもできる。
上図は、プレテンション加工の前後における、ロープの荷重-伸び曲線の比較例を示したもので、この図例から、プレテンション加工により、ロープの初期伸びが大幅に除去される効果(OD>OD’)と、弾性係数が向上する効果(dl > dl’)が分かる。プレテンション加工による初期伸びの除去される量は、バラツキがあり一定しないが、およそ、加工前の初期伸び量の 50%以上になる。また、プレテンション加工による弾性係数の増大量は、ロープ構成の影響などがあるが、およそ、1.1 ~ 1.2 倍ほどになる。プレテンション加工でロープに加える荷重(張力)は、ロープの構成により変化させる必要がある。プレテンション加工で、ロープに加える荷重の保持時間は、少いと効果が充分で無いが、長すぎても効果は比例して増大せず、ほぼ 30 分ぐらいで飽和する。また、プレテンション加工で、ロープに加える荷重の保持回数(一般に加工回数という)による効果は、2回後は微増傾向を示す。